脊柱管狭窄症をトレーニングで治す

~未来のための「腰再生」~


目次

はじめに

第一章 腰痛と私

  • 人生初の腰痛
  • はじめての自転車チューブと椎間板ヘルニア
  • 「治す人」である石原輝夫先生との出会い
  • 「えっ! 私が腰の手術?」
  • ピラティスとの出会い

第二章 長い手足をもてあましていた少女だったが

  • 『エースをねらえ!』にあこがれて
  • 想定外なことでバレーボールをはじめることに
  • 自立したくてユニチカ女子バレーボール部へ
  • トレーニングの大切さを体得したユニチカ時代
  • 骨折から得たもの
  • 全日本に選抜
  • そしてトレーナーへ
  • 英語で夢を見るまでに
  • アスレティックトレーナー実習三千時間
  • 大学正門前で交通事故、頸椎四/五番の椎間板破裂
  • 阪神淡路大震災によって
  • 全日本女子バレーボールチームのトレーナーになるというゴール

第三章 トレーナーという仕事を考える

  • 日本のトレーナーの仕事~理想と現実
  • アメリカの大学でアスレティックトレーナーとして働く
  • 私の理想とするトレーナーは

第四章 脊柱管狭窄症の最前線

  • 背骨の構造と脊柱管狭窄症
  • 脊柱管狭窄症の原因
  • 症状は、腰から足の痛み、間欠跛行
  • 間違われやすい疾患
  • 間欠跛行のメカニズム
  • 脊柱管狭窄症の診断と治療
  • 急増する脊柱管狭窄症
  • コアスタビライゼーションとピラティス
  • 体幹の三つの層:外層→中間層→深層
  • コアスタビライゼーションの第一歩
  • ピラティスは背骨を安定させるエクササイズ

第五章 「コアヌードル」の誕生

  • 腰痛の再々発と「コアヌードル」のオリジン
  • 「コアヌードル」の誕生と、誕生から得たもの

第六章 腰再生プログラム 五つのステップ

  • レッドフラッグを見極める
  • まずは腹式呼吸から
  • いよいよ本格的な腰再生プログラムへ
  • ステップ1 寝て整える「背骨の生理弯曲」
  • ステップ2 背骨を支える筋肉を、スイッチONに
  • ステップ3 股関節と胸椎を動きやすく
  • ステップ4 背骨のGPSセンサーの機能回復
  • ステップ5 筋膜を整える

第七章 腰痛からの卒業者

  • アスリートも一般の人も同じ
  • 間欠跛行第一号
  • アスリートの腰痛① 椎間板ヘルニアのバスケットボール選手
  • アスリートの腰痛② 分離症のプロソフトボールピッチャー
  • 分離すべり症で、でもゴルフが何よりも大好き
  • コアヌードルのエクササイズで副産物
  • 鋼鉄のような柔軟性で
  • 理学療法士へバトンを渡す

結びにかえて

附録 腰再生プログラム

資料編 用語解説


大久保 衞 (医)貴島会 ダイナミックスポーツ医学研究所顧問 推薦

“今や、日本人でアメリカの大学に留学し運動生理学や機能解剖学を学んだ人は珍しくない。しかし著者は、かつて日本を代表する女子バレーボール名門チームの選手で、全日本の代表選手でもあった。そんなアスリートが、セカンドキャリアとしてアメリカの大学で学び、NATAのトレーナー資格まで取得した例はそう多くないはずだ。これだけでも十分凄いが、さらに自らトレーニングを実践し、頚椎や腰椎、膝関節の手術を回避してきた原体験はすさまじい。

著者の興味深い数々のエピソードとともに本書で説かれる保存療法は、大学で修めた身体科学の基本に最新の理論が味付けされているという安心感と、自らの現場体験を踏まえた熱いこころの両面から導かれる。世の中には、数々の理由で手術を回避したい人は少なくない。そんな人々に保存療法の可能性を伝え、実行する勇気とチャンスを与えるのがいわば著者のミッションなのだ。もちろん保存療法にも限界がある。しかし、現在、自らの脊柱管狭窄症の治療で悩んでいる人、同症の患者と向き合う医療関係者には一度は手にとって読んで欲しい本だ。そして将来スポーツトレーナーを目指して勉強中の諸君には、先輩の苦労話とともにトレーナーという仕事の素晴らしさも味わって欲しい”


今や国民病ともいわれる脊柱管狭窄症。高齢者に限らず、若年層にも「脊柱管狭窄症予備軍」が増えている。脊柱管狭窄症の患者が増え続ければ、日本の医療費はどんどん増大してしまうと筆者はいう。本書では、バレーボール選手として活躍した著者自身の腰痛経験や、アメリカ仕込みのトレーニング法を紹介。腰痛解消のヒントを得ていただくだけでなく、脊柱管狭窄症というテーマを通し、福祉と医療のひとつの現場を知っていただきたい。

[ここがポイント]

  • アスリートからトレーナーとなった筆者ならではの視点。
  • 腰痛を発症・回復した筆者自身の経験を紹介。
  • アメリカでトレーナーとしての知識・技術を学んだ筆者ならではの、脊柱管狭窄症に関する最先端の情報を掲載。
  • 筆者のトレーニングにより腰痛から回復した方々の実例を、アスリートから一般の方まで豊富に紹介。
  • 多くの方のトレーニングにあたってきた実績のある筆者が見る、現代の腰痛事情。


概要コラム

「ゼロトレ」という言葉を一時期よく見かけた。体に負担のかからない「ゼロポジション」が大切とのことだが、何がどう体に影響するのか。「ニュートラルポジション」「アスレチックポジション」という表記ならご存じの方もいるかと思うが、スラリとした姿勢だけではなく、肩や腰痛への負担にも大きく関わるので、本書の概要をかいつまんで整理する。

  • 座る姿勢が多いと股関節前面の筋肉が縮まる ⇒ 腰を反らせて立つ ⇒ 一歩一歩あるくたびに腰を更に反る ⇒ 脊柱管の圧迫が進み狭窄症へ
  • 背骨は部位によって回旋、伸展できる可動域が大きく異なる。左右への回旋は胸椎だと35度、腰椎だとわずか5度ほど。腰を無理に捻ろうとすると当然痛めやすい。
  • 体の部位や関節は、可動性と安定性の交互パターンで成り立つ。

例: 足(安定性)⇒ 足関節(可動性)⇒ 膝関節(安定性)⇒ 股関節(可動性)

どこかに問題があると、上下の部位に負担がしわ寄せされ傷めやすい。股関節が硬いと腰を痛めるなど。

  • 体を動かすとき、腹横筋が先行して収縮を起こし背骨を安定させ、それから本動作が始まる(←とても重要)。一度腰痛を起こすと腹横筋の先行収縮パターンが崩れ、腰を傷めやすくなる。
  • 背骨を支える筋肉のうち、腰部では多裂筋が最も発達している。その多裂筋は、損傷を起こすと直後から神経伝達が途絶え24時間以内に筋委縮が始まる特性がある。それ以外の脊柱起立筋などでは、損傷をさらに悪化させないための筋硬直や、使わないことによる筋委縮が起こる。
  • 委縮した筋肉では、固有受容器と呼ばれる感覚センサー(本書ではGPSセンサーに例えている)が働かなく、脳との神経伝達がとれない。
  • 固有受容器は、ぐらぐらした状態でバランスを保とうとすることで有効化が可能。そのため、正しい姿勢(背骨本来のS字カーブの状態)で固有受容器をトレーニングしないと、脳は正しい位置情報を認識できず適切な動作指示が出せない。
  • 呼吸法で筋緊張をゆるめ、背骨の安定化で全身を強化する。このピラティスの基本は、腰痛の克服にとても有効。