リブフレアの問題

リブフレア≒長引く腰/肩痛

呼吸の荒い人(呼気制限)は概して肋骨の下部が広がっていることがあります。それに対して、呼吸の浅い人(吸気制限)でも姿勢をよく見せるための代償動作により、腰の反りを強めてリブフレア(肋骨下部のフレア)を起こしているケースがあります。

ストレッチをしたり、トレーニングをしたり色々と努力をしているけれども、腰痛や肩の痛みがなかなか改善されない。

そんな時は、下部肋骨の状態をチェックし、呼吸と共に改善することで、長引く痛みの脱却につながることが最近の研究でわかってきています。




リブフレアとは


肋骨の下部が前方に突出した姿勢を表す言葉で、通常、胸骨下部が写真のように突き出たり、背中がまっすぐになりすぎたり、反ったりして、肩甲骨が過度に後ろに引っ張られる姿勢になりがちです。


肋骨のフレアは、立位で胸郭や胴体が骨盤の前方に位置し、胸椎の後弯が失われ、しばしば骨盤の前傾にもつながります。膝の過伸展(膝を後ろに突き出しすぎたり)、真っ直ぐに伸ばしすぎたりすること)でこれを補う代償的な姿勢をとることもあります。

肋骨下部の広がりは大きく分けて3通りあります。また、これらが重複することや左だけ右だけというケースもあります。

猫背や巻き肩姿勢をよく見せようと胸を張ることで、肋骨下部を前方に突き出して肋骨のフレアを起こす傾向にあります。このケースでは腰痛や肩関節障害を起こしやすく、問題解決は単純ではないので要注意と言えます。

3つのタイプの肋骨のフレア

a. 肋骨下部が突き出ている

仰向けの状態や立位で肋骨下部がスキーのジャンプ台のように下肢に向かって高くなっているのが特徴。腰部に大きな反りが見られる。


b. 肋骨下部が広がっている

胸骨下角から肋骨を左右それぞれの方向に辿っていった時の角度をはかると100度以上になっていることが特徴。上記のaとの混合のケースもある。腹部がドラム缶のように広がっていることが多い。


c. エクササイズ中のリブフレア

通常はあまり目立たないが、エキササイズ中に腰部の伸展が起こることにより、肋骨下部が付き出ることが特徴。

肋骨フレアの問題点

胸郭の形状が変わってしまうと、呼吸の主要筋である横隔膜の動き、可動性に悪影響を与えます。その結果、呼吸パターンは適切で効果的ではなくなり、様々なからだの不調を起こしてしまいます。特に骨盤の前傾とともに腰痛をひきおこしやすくなります。

①横隔膜の機能低下:

呼吸の中心である横隔膜がうまく働かず、

  ➡胸式呼吸優位になる⇔腹式呼吸できない

  ➡自律神経の乱れ、心因性の不調をひきおこす

  ➡呼吸の効率が悪くなります

  ➡腹腔内圧(IAP)が高め難くなります


②胸椎の可動性の低下:

適切な胸椎の後弯が消失し

  ➡胸椎の可動性を腰椎で代償することで、腰痛をひきおこします

  ➡肩甲骨が胸椎でうまく動かず、肩関節の可動性を低下、肩関節障害をひき起こします


③姿勢不良:

肋骨下部が骨盤より前方に突出することで、

  ➡腰椎の前弯を大きくし、腰痛をひきおこします

  ➡腹斜筋が機能低下をおこし、腹部をドラム缶のように膨らませます

  ➡前方重心の姿勢で股関節を外旋させます


リブフレアチェック

横隔膜が機能不全を起こしてしまう原因のひとつ、肋骨のフレア(リブフレア)を簡易でチェックすることができます。

なかなか改善が見られない慢性の腰痛や肩痛では、隠れた要因でもあります。肋骨のフレアを調べてみることは改善には有効な手段です。


①仰向けで膝を曲げて休む、若しくは立位で、腹部の直ぐ頭側にある肋骨下部を軽く触れる。

②肋骨下部から腹部の方へ指を移動させる。

ます肋骨は自然に腹筋に流れ込むが、スキージャンプ台のように肋骨下部が出っ張ってしまうことがあります。これが肋骨がフレアを起こしていると言えます。左右どちらか、若しくは両方が出てしまっていることもあるので、両サイドのチェックが必要です。


①胸骨の最下部から外側に向かって、最下部の肋骨の下縁を触る。

②左右の肋骨下縁の角度(ISA:胸骨下角)を確認する。

  腹筋が緊張し、胸郭が過膨張している場合、ISAは標準の約90度以上に広がり、これが肋骨のフレア(リブフレア)です。左右に広がりが違うこともあるので、注意深くチェックする必要があります。また、この角度は90度前後であるべきだと考えられていますが、腹筋が過剰に活動していると逆に角度が小さくなり、結果的にその角度が狭くなることがあります。


3.  その他

両側の肋骨のフレアが起きると、体前屈、体側屈は難しくなります。両側の肋骨フレアとともに腰椎の前弯(反り)は大きくなる傾向です。また、肋骨のフレアを起こしている側への回旋は難しくなります。

リブフレアの原因

肋骨が外側や前方に広がる原因は、さまざまな要因が重なって起こります。リブフレア改善は、原因を一つ一つ取り除くことになります。


A. 腹筋群の弱化

腹筋群は、胸郭下部を下方および内側方向に引っ張り傾け、胸郭をよりニュートラルなポジションにする役割を担っています。

関与する筋肉群: 腹直筋、内腹斜筋、腹横筋

これらの筋肉が弱化する、または抑制されている場合、胸郭下部が外側や前方に広がることになります。


B. 効果的でない呼吸

正常な呼吸のメカニズムをつかさどる横隔膜は、胸郭の底部に位置する重要な筋肉です。

横隔膜が最適に機能していない場合、身体は吸気を補助しようとして肋骨下部を前方向に広げることで代償する(*)ことがあります。広がった下部胸郭を腹筋群が呼気でニュートラルな胸郭の位置に戻すことができれば問題は起こりにくいですが、腹筋群が弱化していると、胸郭下部はひろがったままとなります。その結果、リブフレアをおこしてしまうのです。

(*胸郭が窮屈で吸気時に全方向に広がらないため、それを補うために呼吸パターンを変えることがある)


C. 背部の筋肉群の硬化

腰部まわりの筋肉が硬くなると、腰椎に過度のアーチが生じやすくなります。その結果、胸郭の下部が前方に突出し、リブフレアを起こすことになります。背筋群の硬化は慢性の腰痛にもつながります。

硬くなりがちな筋肉群:腰方形筋、 脊柱起立筋、広背筋、外腹斜筋


D. 肩関節屈曲の可動域制限

日常生活やエクササイズ中などで腕を頭の上の方向に動かすときに、下部肋骨が飛び出てしまうことがあります。これは、肩の屈曲の可動域が十分でない可能性があります。肩の可動域の不足を補うために、腰を反ることで代償するために起こしがちです。


D. 漏斗胸 (胸壁の変形)

これは先天性の胸壁の変形で、胸が陥没したように見えるのが特徴です。遺伝的・構造的なものであるため、胸郭に影響を与えるには一定の限界があります。


リブフレアの改善(Coming soon)

リブフレアにおいて肋骨が外側に広がる原因には、さまざまな要因が重なって起こります。


静止姿勢での肋骨の理想的なポジションは、胸郭が骨盤と一直線になります。

リブフレアでは、 骨盤の位置に対して胸郭が右記のイラストのようになる傾向にあります。右:リブフレアを起こしている下部肋骨